相続税に関する様々な特例

文責:税理士 井川卓磨

最終更新日:2023年11月02日

1 小規模宅地等の特例

 相続税に関する特例のうち、最も重要なのは小規模宅地等の特例でしょう。

 この特例を適用すれば、土地の評価額を最大8割まで減らすことができます。

 この特例には大きく三種類があり、それぞれ利用できる要件や効果も異なります

⑴ 特例居住用宅地等

 特例居住用宅地等とは、被相続人が住んでいた宅地について適用できるものです。

 対象となる土地は、被相続人か、被相続人と生計と一にする親族が住んでいた土地である必要があります。

 被相続人が住んでいた土地について、前提として、被相続人が老人ホームなどの施設に入居していた場合などが問題になることがありますが、一定の要件を満たしている場合には、適用が可能です。

 そして、被相続人が居住していた土地を誰が取得したか、その者が一定の要件を満たすかで適用ができるかどうかが異なります。

 配偶者が取得したのであれば、適用が可能になります。

 被相続人と同居の親族が取得したのであれば、対象の土地に居住を続けており、土地の所有も続けているのであれば、適用が可能になります。

 さらに、「家なき子」という要件を満たす相続人が取得しており、対象の土地の所有も継続しているのであれば、適用が可能になります。

 「家なき子」に該当するための要件には、被相続人に配偶者や同居の法定相続人がおらず、相続開始日より前の3年以内に自己の配偶者、3親等以内の親族、自己と特別の関係にある法人が所有する家屋に住んでいないこと、居住する家屋を過去に所有していないことがあります。

 被相続人と生計と一にする親族が住んでいた土地については、その親族が取得したのであれば、対象の土地に居住を続けており、土地の所有も続けているのであれば、適用が可能になります。

 さらに、配偶者が取得した場合でも、適用が可能になります。

 この特例が適用できる場合には、330㎡までの土地について80パーセントの減額ができます。

 

⑵ 特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等

 特定事業用宅地等とは、被相続人やその生計一の親族が事業をしていた土地について適用ができるものです。

 被相続人が営んでいた事業と同じ事業を継続している必要があります。

 特定同族会社事業用宅地等とは、被相続人の同族会社の事業の敷地について適用ができるものです。

 これらの特例が適用できる場合には、400㎡までの土地について80パーセントの減額ができます。

 

⑶ 貸付事業用宅地等

 貸付事業用宅地等とは、被相続人やその生計一の親族が貸し付けていた土地について適用ができるものです。

 要件として、事業的規模で貸付を行っていた場合ではない限り、相続開始前3年以内に貸し付けられた宅地等ではないことが必要です。

 建物または構築物の敷地である必要がありますので、アスファルト舗装などがされていない駐車場については対象とはならないとされます。

 さらに、賃料を受け取っていたとしても、相当の対価による貸付である必要もありますし、空室があった場合には、その空室が一時的な空室でない場合にはその部分に対応する宅地についての適用ができません。

 貸付事業を継続し、土地の所有も続けている必要もあります。

 これらの特例が適用できる場合には、200㎡までの土地について50パーセントの減額ができます。

 

⑷ 複数の種類の特例が適用できる場合

 特例が適用できる土地が複数ある場合には、複数の適用が可能な場合があります。

 ただし、その場合には、適用ができる限度面積の調整が必要です。

2 特定計画山林の特例

 特定計画山林の特例とは、森林経営計画が定められている区域内に存在する山林について適用が可能な特例です。

 特定森林経営計画対象山林を被相続人の親族が取得し、森林経営計画に基づいて事業を行っており、山林を所有し続けていれば適用が可能です。

 小規模宅地等の特例と併用することもできる場合がありますが、その場合には調整が必要です。

3 相続税の納税猶予の特例

 売却が難しい中小企業の株式や農地について、相続税の納税猶予の特例が認められています。

 この要件を満たす場合には、納税の猶予が認められ、さらに、要件を満たす場合には免除されることもあります。

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