遺産分割の流れ

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2024年07月17日

1 遺言書がないかを確認する

 亡くなった方が遺言書を作成せずに亡くなった場合には、遺産分割協議をすることが必要です

 遺言書は、主に自筆で作成されているか、公正証書で作成されている場合があります。

 自筆の場合には、家庭裁判所での検認の手続きをする必要があります(参考リンク:裁判所・遺言書の検認 )。

 遺言書は、自宅内にあるか、誰かに預けてあるのでしょうから、見つからない場合には探す必要があります。

 法務局で保管ができる制度もできましたので、この制度が利用されていないかどうかも調べましょう。

 この制度が利用されていれば、どのような遺言書が作成されていたのかという書類を発行してもらえます(参考リンク:法務省・自筆証書遺言書保管制度 ・証明書について)。

 公正証書で作成されている場合には、これが見つからないときは、公証役場に行って、これが作成されていなかったかどうかを検索してもらうことができます(参考リンク:日本公証人連合会・亡くなった方について、公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか?)。
 遺言書があることが分かった場合には、遺言書を作成した公証役場で公正証書の謄本を発行してもらってください。

 これらの遺言書があれば、それによって相続手続きができますが、遺言書が見つからなかったり、有効なものではなかったりしたときは、遺産分割協議をする必要があります

2 相続人調査をする

 遺産分割協議は相続人全員でする必要がありますので、まずは相続人調査を行います

 この相続人調査というのは、基本的に、戸籍を取り寄せて行うことになります。

 すなわち、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せたうえで、その方に配偶者や第1順位の相続人である子どもの相続人がいないかどうかを確認します。

 子どもの相続人がいる可能性があることが分かった場合には、その相続人が存命であるかどうかを調べるため、その子どもの現在の戸籍を取り寄せます。

 その子どもが亡くなっている場合には、さらにその子どもが相続人になりますので、亡くなった子どもの出生から死亡までの戸籍、その子どもの現在の戸籍が必要になります。

 このように、法律上の相続人が誰であるのかを、戸籍を取得していくことで確定することになります。

3 相続財産の調査をする

 遺産分割協議をするためには、分割の対象となる相続財産が何なのかを確定する必要があります。

 どのような不動産があるのか、どのような預貯金やその他の金融資産があるのかなどを調査していきます

 不動産については、毎年、自治体から送付されてくる納税通知書に不動産の内容が記載されています。

 しかし、固定資産税がかからない程度の評価額しかない不動産である場合には、このような通知書が送られてこない可能性がありますので、注意が必要です。

 預貯金は、通帳が残っていれば、そのような口座があることが分かりますし、このようなものがない場合には、心当たりのある金融機関に問い合わせて、口座がないかどうかをご確認ください。

 通帳の履歴であったり、金融機関から発行してもらった口座の取引履歴の内容を確認することで、他の財産の存在が分かることがあります。

 たとえば、他の金融機関からの出入金があればその口座の存在が判明しますし、年金を受給していたにも関わらずそのような入金がない場合には、判明していない口座の存在をうかがうことができます。

 株式や投資信託などの金融資産については、証券会社から定期的に報告書が届きますが、ネット証券などについては、このような書類が届かないことがありますので、書類が届いていないからといって、口座がないというわけではありませんので、ご注意ください。

 証券口口座の存在が分かっているにもかかわらず、証券会社が分からない場合には、証券保管振替機構に照会をして、どの証券会社で金融資産が管理されているかを確認することができます。

 相続財産調査は、なるべく調べられるところまで調べることが望ましいです。

 というのも、後日、他に相続財産があることが判明した場合には、その部分についても遺産分割協議をする必要があり、その際に、スムーズに協議ができるとは限らないからです。

4 遺産分割協議をする

 上記の内容が確定したら、相続人間で遺産分割協議を行います

 誰がどの財産を取得したいのかの取得希望を確認したうえで、相続人間で競合した場合には、調整していくことになります。

 このように調整をしていった結果、それぞれの法定相続分を踏まえながら協議を進めていくことになりますが、相続人全員が同意をすればよいのですから、必ずしも法定相続分どおり分ける必要はありませんし、特定の相続人がすべての財産を取得するという内容の遺産分割でも問題ありません。

 法律上は、特別受益や寄与分といった法定相続分を調整する要素もありますので、これらも踏まえたうえで、協議を進めることにもなります。

5 遺産分割協議がまとまらない場合には裁判をする

 遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることになります

 遺産分割調停では、裁判所が相続人の間に入って、協議の調整をしてくれます。

 このような調停でも遺産分割が成立しない場合には、基本的には、遺産分割審判に移行し、裁判所が遺産分割の内容を決めることになります

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