遺留分を請求する方法

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2024年05月21日

1 遺留分を請求したことが分かる証拠を残しておく

 遺留分を請求する際には、書面で請求をして、遺留分を請求したことが分かる証拠をしっかりと残しておきましょう

 たしかに、遺留分を請求する際に、書面でしなければならないという法律上の要件はありません。

 しかし、遺留分の請求は、みずからの遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に請求する必要があり、この期限内にしっかりと請求したことを証拠して残しておくために、書面で請求をしておきましょう。

 実務上は、内容証明郵便によって、この証拠を残しておくというのが一般的です。

 相手方に請求の書面が到達したことの証拠として、配達証明も付けるようにもしてください。

2 遺留分の対象の財産を調査する

 遺留分の額を計算するためには、遺留分の対象となる財産を把握する必要があります

 不動産、預貯金、株式など、被相続人の財産を調査し、必要に応じでそれぞれの評価を行います。

 また、生前贈与があったかどうかについても確認します。

3 遺留分の額を計算する

 遺留分の額を計算するには、まずは遺留分の割合を計算する必要があります

 全体の遺留分の割合は、尊属だけが相続人である場合には3分の1、それ以外の場合には2分の1で、兄弟姉妹には遺留分はありません。

 この全体の遺留分のうち、それぞれの相続人の法定相続分に応じた割合が、その方の個別的な遺留分割合になります。

 上記のとおりに調べた遺留分の算定の基礎となる財産額に対して、個別的な遺留分割合をかけ、すでに受け取っている財産等を差し引いた額が、その方の遺留分侵害額になります。

 遺留分を請求する相手が複数の場合には、その侵害している割合に応じて一定の計算式で計算し、各自に対する請求額を計算します。

4 遺留分の額が決まらないときは裁判手続きをする

 遺留分を請求し、請求相手とその額について話し合い、その額について合意ができれば、その額を支払ってもらいましょう。

 後日、トラブルとなることを防ぐためには、遺留分侵害額についての合意内容を記載した合意書面を作成しておく方が望ましいでしょう。

 話合いをしても合意ができない場合には、裁判手続きをする必要があります

 まずは、家庭裁判所に対して、遺留分調停を申し立てるのが一般的です。

 この調停では、裁判所に当事者の間に入ってもらって、当事者間でその額や支払方法などについての合意ができないかを調整してもらうことができます。

 ただし、あくまで調停も話合いですから、当事者間で合意ができない場合には、調停が成立することはありません。

 調停が成立しなかった場合には、地方裁判所または簡易裁判所で、遺留分侵害額の支払いを求める訴訟を提起する必要があります。

 この訴訟では、請求をする側と請求をされる側が、それぞれの主張やそれを裏付ける証拠を提出し、裁判所が遺留分の内容を決める判決をします。

 第1審の裁判所の判決に不服がある場合には、不服がある側は控訴をして、判決内容の変更を主張することができます。

 最終的に判決が確定すれば、請求できる遺留分の内容も確定することになります。

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